【粒子は壁をすり抜ける?】メビウスの帯が示す“裏表のない”物理世界

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メビウスの帯とエントロピーの双対性:右手系から左手系へ

物理学の世界では、「エントロピーは常に増大する」という法則が絶対的な原則として扱われています。これが、いわゆるエントロピー単調増大則です。しかし、私たちの世界に広く見られる「双対性」や「対称性」の概念から考えると、エントロピーにも増大と減少、つまり対をなす存在があるのではないかという問いが自然と浮かび上がります。

この問いを考える上で非常に示唆的なのが、「メビウスの帯」というトポロジー的構造です。


メビウスの帯:右手系から左手系へ

メビウスの帯とは、表と裏の区別がつかない向き付け不可能な曲面です。この帯の上を一周して元の位置に戻ると、初めに定めた座標系(たとえば右手系)は左手系に変わっています。すなわち、右手系と左手系が鏡像のように入れ替わるのです。

メビウスの帯を一周すると赤矢印と緑矢印で左手系と右手系が入れ替わる。
出典:双曲的非ユークリッドの世界を視よう:メビウスの帯(1)

このことは、単なる幾何学的な奇妙さにとどまらず、物理的・哲学的な意味を持ち得ます。ここで仮に、右手系を「エントロピー増大方向」、**左手系を「エントロピー減少方向」**と定義してみましょう。すると、メビウスの帯を一周することは、エントロピーの方向が反転する過程、すなわち「時間の矢」の反転を暗示していると考えることもできます。


因果律とメビウスの帯:作用と反作用の鏡像関係

この構造の意味するところは、物理の基本法則にも新たな解釈を加える可能性を持ちます。たとえば、**ニュートンの”動的”作用・反作用の法則F1 * v1 = – F2 * v2は、力と速度が逆向きになって、常に対となって働くことを示しますが、これはメビウスの帯を一周して系が反転するような「因果の双対性」**を示しているのではないでしょうか。

ここに、スミルノフ物理学において「鏡像変換」が重要な役割を果たす理由が見えてきます。因果そのものが鏡像として反転する構造に組み込まれているからです。

参考:動的作用反作用の法則「Fv=-Fv」は、四元数の”外積”で説明される。


磁気単極とメビウス構造

さらに興味深いのは、こうした非自明な位相構造の中では、磁気単極(モノポール)のようなトポロジカル特異点が自然に現れる可能性があることです。通常空間では観測されないこれらの存在も、メビウス構造のような非ユークリッド的空間では、その幾何学的特性から場の特異性として出現することが考えられます。


面が一つしかない世界:壁が消えるということ

最後に、円筒とメビウスの帯を比較してみましょう。通常の円筒には表と裏の二つの面があるため、「壁の厚さ h」が存在します。しかし、メビウスの帯は表裏のない一つの面しか持たないため、「壁」が定義できません。

このことは、物質的な壁が存在しない=障壁が消えるという物理的な直観につながり、いわば「超透過現象」が起こる理論的余地を生み出します。これは、量子トンネル現象やトポロジカル絶縁体のエッジ状態に見られるような、通常の空間では想定しにくい物理現象への橋渡しになるかもしれません。


双対性の思考を、物理の未来へ

現代物理学は、確かにエントロピーの増大や因果律といった「一方向性」に強く依存しています。しかし、メビウスの帯のようなトポロジー的思考を取り入れることで、「双対的世界」や「対称性の回復」という新たな物理観が見えてくるのではないでしょうか。

右手と左手、エントロピーの増大と減少、作用と反作用。すべては、ひとつながりの世界の中で、反転しながら共存しているのかもしれません。

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